2004年台湾総統選挙(2)
（やはり選挙に興味はないが台湾小吃には興味がある、という方はこちらへどうぞ） 大変なことになったものだ。 総統選挙がお祭り騒ぎなのももう最後だろうと思い、私は野次馬的に見物すべく台湾に行くことにした。 中正空港に降り立ち、入国審査を待っていると、ゲートの向こうに「公民投票」への参加を訴える看板が貼ってあった。総統選挙と同時に行われる「中国のミサイル配備に対して抗議するか」など2項目の賛否を問う公民投票への参加を呼びかけるものだ。「『陳呂配』の選挙戦略だ」として「連宋配」支持者を中心に投票ボイコットの動きがあるものである。パスポートコントロールを通過し、近付いてみるとその下に「公民投票は欺瞞だ」と書いたビラが張ったあり、入国直後から選挙モードを感じる光景である。預けた荷物はなかったのでそのまま荷物コントロールを抜けて外に出ると、青天白日旗を振った集団が目に入った。この総統選挙は海外居留者が帰台して投票することが認められているため、「連宋配」に投票すべく帰台した人を迎える人たちの集団である。 空港からバスで台北市内に向かい、台北駅前で降りて駅前のホテルに宿を取り、部屋に入ってテレビをつけたところ・・・ 「陳呂配」の2人、即ち陳水扁・呂秀蓮の2人がこの日の13時45分に台南での「最後のお願い」のためにジープに乗って手を振りながら街を走っていたところ、何者かに撃たれて病院に運び込まれたというのだ。陳水扁は腹を、呂秀蓮は腿を撃たれたとのことである。現場からは弾痕が発見され、総統の腹部からも弾痕が発見されたそうだ。一騎討ちの総統選挙投票日の前日に片方の候補者が打たれたというだけでなく、正副総統が狙撃されたということになる。台湾でチャンネルをまわすと100に迫ろうかというチャンネルの数にうんざりするが、ニュース専門局はいずれもこの話題を大きく取り上げていた。私が見た時点では、2人は奇美病院に自力で辿り着き、命には別状がないとのことである。また、連戦が陳水扁・呂秀蓮の2人に見舞いの意を伝えたことも報道された。 投票前日にこのようなことが起こりきな臭い選挙になったな、と思いつつ、寝不足だったので横になったまま寝てしまった。気がついたら午後6時。駅前の小吃店で魯肉飯やら炒豆腐やらを食べた後、新聞で「連宋配」が中正紀念堂で最後の大規模集会をすると広告を出していたのでMRTで中正紀念堂駅へ向かったが、着いたところ青天白日旗や「連宋配」支持の旗を持った人たちが帰路についていた。時間を間違えたかと思いつつ中正紀念堂の広場に向かったら、案の定後片付けが始まっていた。「連宋配グッズ」売りのおばさんに「もう終わったのか」と聞いたら、「今日阿扁（陳水扁の愛称）が撃たれたから、集会は中止になったのさ」と教えてくれた。なるほど、そういうことだったのか。集会中止でフラストレーションがたまった「連宋配」支持者が中正紀念堂の入り口で「連宋連宋連宋!!当選当選当選!!」のシュプレヒコールを挙げていた。台湾の選挙時の集会では候補者や主要人物の演説後にラッパの音が高らかに鳴り響くのだが、あれはラッパの下にボンベをつけて、鳴らしているのだということを知った。 「陳呂配」側の大規模集会も中止だろうと思いつつ、集会が行われる予定の中山サッカー場へ向かった。確かに集会そのものは中止だったが、サッカー場の前に屋台が並び夜市のような雰囲気の中で、「陳呂配」を支持する人々がシュプレヒコールを挙げていた。両者の大規模集会は中止であったが、「場外戦」に限っていえば「陳呂配」に軍配といえる。 ホテルに戻ると相変わらず今日の狙撃事件の報道が続いていた。陳水扁・呂秀蓮の両名は既に総統府に戻っており、「正副総統として」無事と人心安定を呼びかけていた。 この事件で、報道は「陳呂配」一色。選挙報道ではないので仕方がなかろうが、「連宋配」支援者にとっておもしろくないのは確かであろう。この一件は「陳呂配」への同情票を呼ぶであろうから。「民視」のニュースを見ていたら、この事件の疑問点として陳水扁が防弾チョッキを着ていなかったことなどを挙げていた。犯人は今のところ捕まっておらず、真相は謎のままである。 その「民視」のニュースは深夜に入り、「陳呂配」支持者が集会の会場を夜遅くになっても動かず旗を振り続けていることを取り上げていた。 すっかりキナ臭くなってしまった台湾総統選挙であるが、予定は変えず明日投票である。 総統選挙・公民投票の方法を選挙管理委員会が新聞やテレビで宣伝していたので、概要を下記する。 ・投票時間は3月20日午前8時〜午後4時。 ・総統選挙の投票用紙には候補者ペアの番号（「陳呂配」が1、「連宋配」が2）・写真・名前が記されている。その上に空欄があり、投票する候補者の上にスタンプを押す。 ・公民投票は質問ごとに投票用紙が分かれており、「同意」「不同意」のいずれかの上にスタンプを押す。 ・携帯電話・カメラなど撮影器具の投票所への持ち込みは禁止。 ・投票所の周囲30メートル四方で騒動を起こしたり投票勧誘を行い、係員制止の後もそれらを続けた者は、1年以下の徒刑・拘留もしくは1万5千台湾ドルの罰金。 ・海外から帰台して選挙に参加する者は、総統選挙のみに投票でき、公民投票には参加できない。 台湾総統選挙(3)へ 選挙時の台湾の写真はこちら |